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第140回芥川賞受賞作予想 のこと。

受賞作品候補を見ただけでもう、今回は津村だろう、と思いました。
というか、前回だって津村が一番おもしろかったと思うですよ。
北京オリンピックさえなけりゃあなあ…。
まあ過ぎた受賞作品のことは忘れて、さくさく予想しましょう。
(でも今回、群像11月号が手に入らなかったため、本命未読での予想です(´Д`))


鹿島田真希「女の庭」
団地住まいに馴染めない主婦が、隣に越してきた外国人女性について「きっと彼女も日本に馴染めなくて困ったり戸惑ったりしてるんだろうなあ、例えば~」みたいな感じでいろいろ妄想しちゃうお話。
しかしここ最近の選評を見ると「芥川審査員は妄想小説に対して手厳しい」傾向にあると思います。暗喩も隠しきれてなくて露骨だし。
職場の読書家のかたが鹿島田さんの著作数を確認して「今回の受賞はこの人では?」と言っていたけど、おいら的にはなしの方向で。


・吉原清隆「不正な処理」
タイトルからわかるようにプログラムに関係する小説です。
なんていうか、選考委員の方々が最も苦手とする分野では…と危惧してしまいます。
さらに、公務員の業務を「何かしようとする人々の足を引っ張り上前をはねる仕事」と表現しており、某知事の機嫌を損ねるのではないかと不安になります。
そして序盤の描写が「純文学っぽく飾り付けしたよ!」といわんばかりの空虚さだったのも気になるところであります。


田中慎弥「神様のいない日本シリーズ」
野球をやめたいと言い出した息子に、主人公は野球を続けて欲しいという願いを子供部屋のドア越しに語りかけます。自分の父親のこと、父親と野球の思い出、学生時代のことなど。全編、この語りかけの内容で構成されています。
最初は、なんで日シリを持ち出してきたのか意図が全くわからなかったんですが後半、ベケットの「ゴドーを待ちながら」の台詞が絡んでくるとこの仕掛けがいきいきと動き出したように見えました。
いなくなった自分の父親について、主人公は「日本シリーズで奇跡が起こって西武が勝てば父親が帰ってくるかも知れない、と一縷の望みを賭けます。でもゴドーは来ない…の掛け合いが切なかったです。この部分は個人的に好きな仕掛けですね。
しかし受賞となると…以前候補になった『切れた鎖』も家族史で、しかもあんまり本人の作風に合ってない気がするんですよね…。個人的には『図書準備室』系列のほうが描写も生き生きとしているし、そっち方面でがんばったほうがいいんじゃないかなぁ、という気がします。


・山崎ナオコーラ「手」
主人公は27歳のいろんな観念がゆるい女で、昔からお友達としての「おじさん」を切らしたことがない。その理由はおじさんを通していろいろなスキルを身につけたいから(とは言ってるが、身についてるふうでもない。最後に主人公がおじさん化しているようだったらもうちょっとポイント高かったかも)。
この主人公はおじさんの写真をコレクトしてHPにまとめたりもしていて、このへんを読んで「選考委員のおじさまたちに阿っているのか…?」と思ったが、そのあとでおじさんの行動を嘲笑したりしてるので、そうではないようです。
山崎作品はいつも落としどころが好みでなく、今回もちょっと床ずれのような感覚を味わいました。テーマは「愛情の移行」だと思われますが、主人公がふらふらしすぎてて、ちょっとボケちゃってる感じ。


・墨谷渉「潰玉」
ちょwwwwwwwww
とリアルに言ってしまうくらい、他の候補作品と毛色が違います。
主人公は法律事務所に勤めるエリートさんなのだがいかんせん「女の子からめちゃくちゃにされたーい、芸術的にノックアウトされたーい」というアイタタな願望の持ち主で、これはという女の子をめっけると挑発して暴力を受けて陶然としちゃう究極の変態です。
最後は理想的な攻撃をする暴力少女に望み通り「潰玉」されちゃう訳ですが、これは受賞はないでしょうな。人生と引き替えに理想を実現する話…とまとめられなくもないし、文章や話の流れもよくできてると思うのですが…。
なんというか、需要のなさそうな方向性の小説、という意味では西村賢太と同じ匂いを感じます。



…というわけで、今回の本命は津村です。どんどん話がうまくなっていってるし今回こそは、というのもあるんだけど、最近立て続けに作品が単行本になっているので、「賞をとったときに既刊もセールスが見込めるとの判断かな」って思うのですね。
なので、対抗はセールスの点から判断して、山崎ナオコーラとしておきます。



ちなみに直木賞ですが、こっちは全然わかりません。候補作の中では「きのうの世界」しか読んでないし、候補者の中でも恩田と天童しか読んだことないし。
ただ、6作品中3作品が時代物と偏ってるので、この3作品は厳しい気がしますね。非時代物の3作品では道尾秀介がキャリアが短いので外してみる。恩田vs天童と考えると、個人的に恩田は「わたしの好きな食材ばかりを使って、わたしの嫌いな料理に仕立て上げる料理店」なので、幾度も肩すかしを食らっている仇敵なわけです。という私怨がらみの予想ですが、いちおう天童が本命ということで。

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